OpenAIのCodexに、画面操作を一度録画するとAIがその作業を覚えて、次回から代行できる「Record & Replay」という新機能が追加されました。
このニュースを見て、RPAを使っている人や、これから業務自動化を考えている人は、こう感じたかもしれません。
「これ、RPAがいらなくなるのでは?」
結論から言うと、今すぐRPAが完全になくなるわけではありません。
しかし、RPAの作り方や使われ方は大きく変わっていく可能性があります。
これまでのRPAは、人が細かく手順を作るものでした。
どのボタンをクリックするのか、どの項目に入力するのか、エラーが出たらどうするのか、条件分岐はどうするのか。
業務を自動化するには、作業の流れを正確に整理し、RPAツール上でフローを作る必要がありました。
一方で、CodexのRecord & Replayは、人が実際に作業している様子をAIに見せることで、その作業を再利用できる「スキル」として保存する仕組みです。
たとえば、次のような作業が想定されています。
・経費精算の入力
・駐車場の予約
・定例レポートのダウンロード
・動画の公開作業
・管理画面への登録作業
・毎月決まったWeb操作
つまり、毎回ほぼ同じ手順で行っている画面操作を、一度AIに見せて覚えさせるというイメージです。
従来のRPAと何が違うのか
従来のRPAは、基本的には「決められた手順を正確に繰り返すロボット」です。
そのため、画面のボタン位置が変わったり、想定外のポップアップが出たり、処理対象のデータが少し変わったりすると、エラーになることがあります。
もちろん、Power Automate DesktopなどのRPAツールでも、条件分岐や例外処理をしっかり作れば対応できます。
ただし、その分だけ作成者の知識と作り込みが必要になります。
Record & Replayの大きな違いは、「人が一度やって見せる」という点です。
AIは録画された作業をもとに、
・どんなときに使う作業なのか
・毎回変わる入力値は何か
・どのような手順で進めるのか
・最後に何を確認すれば完了なのか
といった内容を整理して、再利用できる手順として保存します。
これは単なるクリック記録ではなく、作業の意味をAIが理解しようとする方向です。
ここが従来のRPAとの大きな違いです。
Microsoft Power Automateにも同じ流れがある
この流れはOpenAIだけではありません。
MicrosoftのPower Automate Desktopにも「Record with Copilot」という機能があります。
これは、画面を共有しながら作業内容を説明し、マウスやキーボード操作を記録すると、AIがデスクトップフローの作成を手伝ってくれる機能です。
つまり、RPAの世界でもすでに、
「人がフローを一から作る」
から
「人が作業を見せて、AIが自動化のたたき台を作る」
という方向に進み始めています。
これはかなり大きな変化です。
今までは、業務を知っている人とRPAを作れる人が別であることが多くありました。
現場担当者が作業内容を説明し、それをRPA担当者が自動化する。
この流れでは、どうしても時間がかかります。
しかし今後は、現場担当者が普段の作業をそのまま実演し、AIが自動化の案を作るようになるかもしれません。
では、RPAは不要になるのか?
現時点では、RPAがすぐに不要になるとは言えません。
理由は大きく3つあります。
1つ目は、まだ利用環境に制限があることです。
CodexのRecord & Replayは、現時点ではmacOS向けの機能として案内されています。
また、Computer Useの利用や権限設定も必要です。
2つ目は、会社の重要業務を完全に任せるには、まだ人の確認が必要なことです。
請求、支払い、在庫変更、顧客情報の更新など、ミスが大きな問題につながる業務では、最後の確定操作は人が確認するべきです。
3つ目は、大量処理や安定稼働では、従来のRPAやAPI連携のほうが強い場面が多いことです。
毎日何千件も処理する業務や、絶対に同じ結果を出したい業務では、AIによる画面操作よりも、RPAやシステム連携のほうが安心です。
つまり、今すぐRPAがなくなるというより、RPAの入口が大きく変わると考えたほうが現実的です。
AI自動化が得意になりそうな業務
Record & ReplayのようなAIによる画面操作代行は、次のような業務と相性がよさそうです。
・Web管理画面から定期レポートをダウンロードする
・ECサイトの商品情報を確認する
・管理画面にキャンペーン情報を入力する
・ExcelやCSVの内容をWebフォームに転記する
・毎月同じ条件でデータを抽出する
・社内システムで決まった確認作業を行う
・動画や画像を決まったルールでアップロードする
特に、APIがないシステムや、古い業務ソフト、Web画面でしか操作できない管理画面では、AIによる画面操作の可能性があります。
これまでは、こうした業務を自動化するためにRPAを作る必要がありました。
しかし今後は、まずAIに作業を見せて、自動化できるか試すという流れになるかもしれません。
逆に、まだRPAやAPI連携が向いている業務
一方で、すべてをAIに任せればいいわけではありません。
次のような業務は、現時点では従来のRPAやAPI連携のほうが向いています。
・大量データを高速に処理する業務
・金額や請求に関わる重要処理
・ミスが許されない受発注処理
・毎日安定して動かす必要がある定型業務
・ログや証跡をしっかり残す必要がある業務
・複雑な条件分岐が多い業務
AIは柔軟ですが、完全に同じ動きを保証するという点では、まだ従来型のRPAやAPI連携に強みがあります。
そのため、今後は、
・試作や小さな自動化はAI
・安定運用する業務はRPA
・システム同士をつなぐならAPI
・判断が必要な部分は人間
という使い分けが重要になります。
中小企業にとっては大きなチャンス
この流れは、中小企業にとって大きなチャンスです。
大企業のように専門のシステム部門がなくても、日々の業務の中には「少し面倒だけど毎回やっている作業」がたくさんあります。
たとえば、
・取引先サイトから在庫表をダウンロードする
・メーカーサイトの商品情報を確認する
・EC管理画面で注文状況を確認する
・売上データをCSVで出力する
・Excelに転記する
・社内システムへ同じ内容を入力する
こうした作業は、1回あたり数分でも、毎日積み重なると大きな時間になります。
従来であれば、RPAを作るほどではないと思われていた作業でも、AIに一度見せるだけで自動化のたたき台が作れるなら、試す価値は十分にあります。
ただし、情報漏えいには注意が必要
画面操作を録画するということは、画面に表示されている情報をAIが見る可能性があるということです。
そのため、会社で使う場合は注意が必要です。
特に、
・パスワード
・顧客情報
・売上情報
・個人情報
・取引先情報
・社外秘のデータ
などが画面に映らないようにする必要があります。
AI自動化を使う場合は、いきなり本番データで試すのではなく、まずはテストデータで確認するべきです。
また、最後の送信ボタン、確定ボタン、支払い処理、注文確定などは、人が確認するルールにしたほうが安全です。
RPA担当者の役割はどう変わるか
今後、RPA担当者の仕事は「フローを作る人」から「業務自動化を設計する人」に変わっていくと思います。
これまでは、Power Automate Desktopなどを使って、1つ1つの手順を組み立てる力が重要でした。
しかし今後は、それに加えて、
・どの業務をAIに任せるべきか
・どこまで自動化してよいか
・どこに人の確認を入れるか
・RPAとAIをどう組み合わせるか
・API連携のほうがよい業務はどれか
・情報漏えいをどう防ぐか
を考える力が重要になります。
RPAを作る技術だけでなく、業務全体を見て「一番安全で効率のよい自動化方法を選ぶ力」が求められるようになります。
まとめ:RPAはなくなるのではなく、AIに近づいていく
CodexのRecord & Replayは、RPA業界にとってかなり大きなニュースです。
画面操作を録画するだけでAIが作業を覚え、次回から代行できるようになる。
これは、これまでのRPAの作り方を大きく変える可能性があります。
ただし、現時点ではRPAが完全に不要になるわけではありません。
大量処理、安定運用、厳密な処理、ログ管理が必要な業務では、従来のRPAやAPI連携の価値はまだ高いです。
一方で、少量の繰り返し作業、Web画面での確認作業、レポート取得、管理画面への入力などは、AIによる画面操作代行が広がっていく可能性があります。
これからの自動化は、
「RPAかAIか」
ではなく、
「RPA、AI、API、人の確認をどう組み合わせるか」
が重要になります。
RPAはなくなるのではなく、AIによってもっと簡単に、もっと身近なものになっていく。
CodexのRecord & Replayは、その流れを感じさせる大きな一歩だと思います。
