はじめに:RPA導入で失敗しないために
RPA(Robotic Process Automation)を使えば、繰り返し発生する定型業務を自動化できます。
しかし、設計をおろそかにしたフローは途中で止まる・修正できない・遅いといった失敗につながり、せっかく作った自動化が使われなくなってしまうことも。
この記事では、「業務の棚卸し」から「フロー設計」までの流れを5ステップで解説します。
実際のセミナーで紹介されたポイントを踏まえ、初心者でも実践できるよう丁寧に整理しました。
設計が重要な理由
RPAの自動化フローが失敗する典型例は以下の3つです。
- 処理順が不適切 → 思いつきで組んで順序が崩れ、途中で止まる
- 情報不足 → コメントや仕様がなく、他の人が修正できない
- 無駄な処理 → 重複や不要アクションが多く、フローが遅くなる
👉 これらはすべて 設計不足 が原因。
逆に言えば、設計をしっかり行えば 再現性が高く、誰でも使える強いフロー を作れます。
設計の5ステップ
ステップ1:自動化対象の特定
- 業務棚卸しの中から、自動化の優先度が高いものを選びます。
- 優先度を決める基準は次の3つ。
- 自動化のしやすさ(ルール化しやすいか?)
- 得られる効果(時間短縮やミス削減のインパクト)
- 発生頻度(どれくらい繰り返される業務か)
👉 例:「法人番号サイトから企業リストを取得してExcelに転記する」
ステップ2:作業手順への分解
- 実際の作業を一つひとつ書き出す
- なるべく細かく分解することで、どこまで自動化可能か判断しやすくなります
👉 例:
- 法人番号サイトを開く
- 「都道府県=神奈川県」を入力
- 「市区町村=横浜市神奈川区」を入力
- 検索を実行
- 表示件数を「100件」に変更
- 表データをコピー
- Excelに貼り付ける
- ページを切り替えて繰り返す
ステップ3:自動化可否の確認(検証)
- PADを使って「本当に自動化できるか」を小さい単位で試す
- 例:
- ブラウザーを起動して検索条件を入力 → 動作確認
- 表を抽出 → Excel変数に取り込めるか確認
- 「次へ」ボタンでページ切り替えできるか試す
👉 この段階で「処理順が正しいか」「何を先に実行すべきか」を調整しておくのがポイント。
ステップ4:必要情報の整理
フローに落とし込む前に、必要な要素をリスト化します。
- 使うWebサイトURL
- 保存先フォルダ/ファイル名
- 入力する検索条件(例:都道府県、市区町村)
- 例外処理の条件(例:データが見つからない場合)
👉 ここで 「この場合はどうする?」 を想定して答えを準備しておくと、運用に強いフローになります。
ステップ5:フロー図を作成
整理した情報をもとに、フローを3つのパートに分けて設計します。
- 準備パート
- Excelを開く
- ブラウザーを起動
- 検索条件を入力
- 本処理パート
- データを抽出してExcelに転記
- ページ切り替えを繰り返す
- 最後にExcelを保存
- 例外処理パート
- エラー発生時にExcelを保存して閉じる
- ログを出力して原因を残す
👉 PADでは「リージョン」や「サブフロー」を使って処理をグルーピングすると、見やすくメンテナンスしやすいフローになります。
実際の例:法人番号サイトからのデータ収集フロー
- 対象:法人番号サイト(検索条件を指定して企業リストを取得)
- 処理手順:
- Edge起動 → URL指定
- 検索条件入力 → 検索実行
- 件数を「100件」に設定
- 表データを抽出 → 変数に格納
- Excelに書き込み
- 「次のページ」をクリックし繰り返し
- 完了後にExcel保存 → ブラウザー閉じる
👉 こうしたフローも、設計段階で「何をどこまで自動化するか」を明確にしておけば、作成時に迷いません。
設計のメリット4つ
- 再現性がある → 他部署・他業務にも展開しやすい
- 認識合わせが容易 → 作業者と開発者の認識齟齬を防げる
- 例外処理を想定できる → 強いフローを作れる
- 構造が見える化 → 誰でも読めて修正しやすい
よくある質問(FAQ)
Q1. 設計にどのくらい時間をかけるべきですか?
目安は実装時間の1/3程度。設計に時間をかけるほど、後工程の修正が減ります。
Q2. 設計資料はフロー完成後も役立ちますか?
はい。業務引き継ぎや教育用マニュアルとしても活用できます。
Q3. 自動化対象を選ぶ基準は?
「自動化のしやすさ」「得られる効果」「発生頻度」の3つで優先度を決めましょう。
Q4. 設計と業務棚卸しはどう違いますか?
棚卸しは「全体を見える化」、設計は「自動化できる単位に分解」すること。棚卸しの延長線上に設計があります。
